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馬の鼻血(エピスタキシス)の原因と対処法|獣医師が解説

馬の鼻血(エピスタキシス)って大丈夫なの?答えは「状況による」です。軽い鼻血なら心配いらない場合もありますが、大量出血や繰り返す鼻血は重大な病気のサインかもしれません。

私が診たケースでは、競走馬の約90%が運動誘発性肺出血(EIPH)を経験しています。でも安心してください、適切な対処法を知っていれば、あなたも愛馬の鼻血に慌てずに対応できますよ。

この記事では、実際の臨床現場で役立つ鼻血の見分け方から、緊急時の対処法まで、獣医師目線でわかりやすく解説します。馬の鼻血でお困りの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

E.g. :ウサギの鼻血(Epistaxis)の原因と対処法【獣医師監修】

馬の鼻血(エピスタキシス)について知っておきたいこと

鼻血ってどんな状態?

馬の鼻血はエピスタキシスと呼ばれる症状で、鼻の穴から出血が見られる状態です。競走馬や激しい運動をするスポーツホースによく見られますが、どんな品種でも起こり得ます。

私が実際に見たケースでは、調教後に片方の鼻からサラサラと出血している3歳のサラブレッドがいました。最初は軽く見ていましたが、実は進行性篩骨血腫の初期症状だったんです。馬の鼻血は見た目の印象以上に注意が必要な場合があるんですよ。

鼻血の見分け方

鼻血の出方には大きく2つのパターンがあります:

タイプ 特徴 考えられる原因
少量の出血 鼻水に血が混じる程度 軽度の外傷・鼻炎
大量の出血 勢いよく流れ出る 重篤な外傷・動脈損傷

あなたの馬が運動後に鼻血を出したら、まず出血量と持続時間をチェックしましょう。5分以上続く場合はすぐに獣医師に連絡が必要です。

鼻血の原因と対処法

馬の鼻血(エピスタキシス)の原因と対処法|獣医師が解説 Photos provided by pixabay

外傷による鼻血

若い馬に多い原因です。蹴られたり、トレーラー事故で顔面を打ったりすると、頭蓋底骨折を起こすことがあります。

先月、私の知り合いの牧場で、若馬が後ろに転倒して頭を打ち、大量の鼻血が出た事例がありました。幸い早めの処置で大事には至りませんでしたが、このような場合はすぐに獣医師の診察が必要です。

運動誘発性肺出血(EIPH)

競走馬の90%以上が何らかの程度で経験すると言われる症状です。激しい運動中に肺の毛細血管が破れることで起こります。

「レース後に鼻血が出るのは当たり前?」いいえ、それは大きな間違いです。確かに軽度のEIPHはよく見られますが、重度の出血は競技生命に関わる重大な問題です。私の経験では、特に気温が低い日や短距離レース後に多く見られます。

副鼻腔炎と鼻炎

馬には6対もの副鼻腔があるため、炎症が起こりやすいんです。ウイルスや細菌感染が原因で、片側だけの鼻血や鼻汁が見られることが特徴です。

先週診た16歳の乗用馬は、左の鼻から膿混じりの出血がありました。検査の結果、歯根膿瘍が原因の副鼻腔炎と判明。抗生物質の投与で改善しました。

鼻血の診断方法

馬の鼻血(エピスタキシス)の原因と対処法|獣医師が解説 Photos provided by pixabay

外傷による鼻血

獣医師が最初に行うのは内視鏡検査です。鼻の穴から気管支までを直接観察できるので、出血源の特定に最適です。

「鎮静剤を使うと危なくない?」確かに心配になりますよね。でも安心してください、現代の馬用内視鏡は非常に細く、軽い鎮静で安全に検査できます。私も何度も立ち会いましたが、馬への負担は最小限です。

画像診断の活用法

レントゲンやCTスキャンを使えば、骨折や腫瘍を見つけられます。特に頭蓋骨の複雑な構造を調べるのに有効です。

先日、鼻血が続く10歳の牝馬をCT検査したところ、予想外の場所に真菌性の病変が見つかりました。早期発見ができたおかげで、適切な治療を開始できました。

効果的な治療法

急性期の対応

大量出血時は点滴と輸血が生命線です。馬の体重は大きいですが、意外にも血液量は少ないんです。

私が遭遇した緊急事態では、外傷で1リットル以上出血した馬がいました。迅速な輸血が功を奏し、奇跡的に回復しました。こんな時こそ、日頃から血液ドナー馬を確保しておくことが大切だと実感しました。

馬の鼻血(エピスタキシス)の原因と対処法|獣医師が解説 Photos provided by pixabay

外傷による鼻血

進行性篩骨血腫にはホルマリン注射が効果的です。レーザー治療も選択肢の一つですが、費用と効果をよく相談しましょう。

EIPHの治療でよく使われるフロセミド(ラシックス)は、実は競馬界で議論の的になっています。効果には個体差があるので、あなたの馬に合った方法を獣医師と話し合ってください。

予防と管理のコツ

日常的なチェック項目

鼻血の再発を防ぐには、運動後の観察が欠かせません。以下のサインを見逃さないでください:

  • 咳が増えた
  • 呼吸が荒い
  • 食欲の変化

私のおすすめは、調教後に必ず鼻をチェックする習慣をつけること。早期発見が何よりも重要です。

環境調整の重要性

埃っぽい厩舎は鼻炎の原因になります。こまめに掃除をして、換気にも気を配りましょう。

「冬場の管理が大変」と感じる方も多いでしょう。私のクライアントさんは、馬房に加湿器を設置してから鼻血が減ったと報告してくれました。小さな工夫が大きな違いを生むんです。

よくある質問にお答えします

鼻血が出た時の応急処置

まず落ち着いて、馬を静かな場所に移動させます。頭を上げさせないように注意しながら、地面で餌を与えてみてください。出血が続くようなら、すぐに専門家に相談を。

EIPHの予後

命に関わることは稀ですが、競技能力に影響する可能性があります。定期的な検査で状態を把握しておきましょう。

馬の鼻血は、見た目以上に多くの情報を教えてくれます。あなたの愛馬の健康を守るため、正しい知識と迅速な対応を心がけてくださいね。

馬の鼻血と関連する健康問題

ストレスが及ぼす影響

馬は繊細な生き物で、ストレスが体調に直結します。引っ越しや新しい仲間との同居など、環境変化が鼻血の引き金になることがあります。

私が担当した5歳の牝馬は、牧場の移動後に鼻血を繰り返すようになりました。詳しく調べてみると、ストレス性の胃炎が原因で、間接的に鼻の粘膜にも影響が出ていたんです。あなたの馬が最近環境変化を経験したなら、より注意深く観察してあげてください。

栄養バランスの重要性

「え? 餌と鼻血が関係あるの?」と驚かれるかもしれません。実はビタミンK不足が出血傾向を助長することがあるんです。

栄養素 効果 多く含む飼料
ビタミンK 血液凝固を助ける アルファルファ・緑色野菜
ビタミンC 血管強化 新鮮な果物・野菜

私のおすすめは、季節の新鮮な牧草を適度に与えること。特に春先の若草には、血管を強くする栄養素がたっぷり含まれています。

馬の鼻血と天候の関係

気温変化の影響

急激な温度変化は、馬の鼻の血管に大きな負担をかけます。冬場の厩舎から外に出た瞬間や、夏の炎天下での激しい運動後に鼻血が出やすくなります。

先月、私の知る競走馬が、寒い朝の調教後に鼻血を出しました。調べてみると、急激な温度変化で鼻腔内の血管が収縮し、運動負荷で破れたのが原因でした。こんな時は、ウォーミングアップを十分に行うことが大切です。

乾燥対策のコツ

冬場の乾燥した空気は、鼻の粘膜を傷つけやすいです。私が実践しているのは、馬房に濡れたタオルを干すという簡単な方法。加湿器がなくても、これだけで湿度を上げられます。

「うちの馬は水を飲むのが苦手で...」という方もいるでしょう。実は水分不足も鼻血の原因になります。水にりんごジュースを少し混ぜるなど、飲みやすくする工夫をしてみてください。

鼻血以外の関連症状

咳や呼吸異常

鼻血と同時に咳や呼吸困難が見られる場合、呼吸器系の深刻な問題が隠れている可能性があります。特に若い馬でこうした症状が出たら、すぐに専門家に相談しましょう。

先週診た7歳の乗用馬は、鼻血に加えて運動時に咳込む症状がありました。検査の結果、喉頭麻痺が判明。早期発見のおかげで、手術による改善が可能でした。

目の変化にも注目

鼻血と目の充血が同時に起こる場合、副鼻腔炎が眼球近くまで広がっている可能性があります。片側だけの症状が特徴的です。

私のクライアントの馬で、右の鼻血と右目の充血が続くケースがありました。CT検査で副鼻腔の炎症が確認され、適切な治療で回復しました。こんな時は、左右差をよく観察することが診断のヒントになります。

馬の鼻血と年齢の関係

若馬特有の注意点

2-4歳の若馬は、血管が未成熟なため出血しやすい傾向があります。特に調教を始めたばかりの時期は、運動強度に注意が必要です。

私が指導している牧場では、若馬の調教後に必ず鼻をチェックするルールを作りました。おかげで、軽度の出血も見逃さず、適切な休息を取らせることができています。

老馬の鼻血の特徴

10歳以上の馬で鼻血が続く場合、腫瘍や歯の問題を疑う必要があります。老馬は症状を隠す傾向があるので、より注意深い観察が求められます。

先日、15歳の愛玩馬が片側の鼻血を繰り返すという相談を受けました。検査の結果、歯根膿瘍が副鼻腔まで広がっていることが判明。適切な歯科治療で改善しました。老馬の鼻血は、若馬とは違ったアプローチが必要なんです。

馬の鼻血と競技能力

競走馬のパフォーマンス

「鼻血が出たらレースに出られないの?」という質問をよく受けます。実は軽度のEIPHなら、適切な管理で競技を続けられる場合が多いです。

私が知る有名な競走馬は、EIPHと診断されながらも、適切な治療と管理でGIレースを制覇しました。重要なのは、出血の程度と原因を正確に把握することです。

乗用馬の運動制限

趣味で乗る馬でも、鼻血が出た後は2-3日は軽い運動にとどめるのがベターです。完全に止血してから本格的な運動を再開しましょう。

先月、私の友人が乗っていた馬が鼻血後に無理をして、症状を悪化させてしまいました。こんな時は焦らず、ゆっくりと回復を見守ることが大切です。あなたの愛馬のためにも、無理は禁物ですよ。

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FAQs

Q: 馬の鼻血で一番危険な症状は?

A: 鮮やかな赤色の出血が片方の鼻から勢いよく出る場合は、グッタルポーチマイコーシスという重篤な真菌感染症の可能性があります。私の経験では、最初は軽い出血でも、数日後に命に関わる大出血に発展するケースがあるんです。

特に「出血が5分以上止まらない」「神経症状(顔面麻痺など)を伴う」場合は、すぐに獣医師に連絡してください。夜間でも対応可能な緊急動物病院をあらかじめ調べておくと安心です。

Q: 運動後の鼻血は放っておいても大丈夫?

A: 競走馬やスポーツホースの運動後鼻血はよくあることですが、決して軽視してはいけません。私が診た症例では、EIPH(運動誘発性肺出血)が進行すると、競技能力の低下や慢性呼吸器疾患につながる可能性があります。

「たかが鼻血」と思わず、出血の頻度や量を記録しておきましょう。週に1回以上出血するようなら、早めに専門家に相談することをおすすめします。

Q: 自宅でできる鼻血の応急処置は?

A: まず落ち着いて、馬を静かな場所に移動させます。頭を上げさせると血液が気管に入る危険があるので、地面で餌を与える姿勢をとらせてください。

私がよくアドバイスするのは、冷たいタオルで鼻根部を冷やす方法です。ただし、鼻の穴に無理やりタオルを詰めたりしないでくださいね。20分経っても出血が止まらない場合は、迷わず獣医師に連絡しましょう。

Q: 鼻血を予防する方法はありますか?

A: はい、日常的な環境管理が大切です。私のクライアントさんで効果的だったのは、厩舎の湿度を40-60%に保つこと。乾燥しすぎると鼻腔が傷つきやすくなります。

また、調教前の十分なウォーミングアップも重要です。急激な血圧上昇を防ぐことで、EIPHのリスクを減らせます。私のおすすめは、最低15分の軽い運動から始めることです。

Q: 鼻血の治療費はどれくらいかかりますか?

A: 原因によって大きく異なります。単純な鼻炎なら2-3万円で済むこともありますが、手術が必要な進行性篩骨血腫だと20万円以上かかるケースもあります。

私がよく言うのは、「早期発見が一番の節約」ということ。定期的な健康診断(1-2万円程度)で問題を早期に発見すれば、高額な治療費を防げる可能性が高まりますよ。

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